人の土俵で褌を取る

気になったニュースの備忘録+α

堺屋太一

堺屋太一

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中日春秋
 十三歳の少年は白黒テレビを熱心に見つめていた。テレビの中で、大道芸人が曲芸を披露している。少年は興奮した。一九四八年、大阪で開かれた「復興大博覧会」。その目玉が白黒テレビだった
▼博覧会の魅力が忘れられなかった少年はやがて通産官僚となって、七〇年の大阪万博開催に奔走する。大阪万博の生みの親の一人で経済評論家、作家として活躍した堺屋太一さんが亡くなった。八十三歳
▼戦後のベビーブーム生まれを「団塊の世代」と名付けたのもこの人なら、規格大量生産に走る当時の風潮を子どもの好物で表現した「巨人、大鵬、卵焼き」も官僚時代のこの人。先見性とアイデアに加え耳目を集める表現の人でもあった
▼「団塊」とは地質用語で、地層中にある周囲とは異なる成分を持つ塊のことをいう。万博に通産省は当初冷ややかで、上司は「やるのなら辞表を書いてからにしろ」と迫ったそうだ。断固拒否した。自身こそ周囲に染まらぬ異なる成分の人だったのだろう
▼日本のイノベーション力の低下について「人生を安全第一と考え、独創と挑戦を回避していないか」と嘆き、特に中央官僚には「『内』の評判ばかり気にしている」と気をもんでいた
東日本大震災後の日本を幕末、第二次世界大戦後に続く「第三の敗戦」にあると見ていた。敗戦から立ち上がるヒントをもっと教えていただきたかった。
中日春秋 中日新聞 2019年2月11日
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2019021102000106.html
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大坂なおみ

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中日春秋
 テニスを題材にした山本鈴美香(すみか)さんの「エースをねらえ!」の「週刊マーガレット」連載開始は一九七三(昭和四十八)年というから半世紀近く前になった。当時、テニスの知識、情報は今ほど一般的ではなく、15、30、40という得点の進み方や0点を「ラブ」という言い方もあの作品で初めて知ったという世代もあるだろう
▼才能を見いだされた高校生の岡ひろみの成長とともに作品全体には世界に通用する、日本勢プレーヤーを育成するという願いが描かれている
▼物語の結末はどうなったか。岡が世界に向けて旅立つ場面で終わっており、その後の活躍は描かれていない。漫画とはいえ、さすがに世界の名選手を相手に勝利を重ねる場面は描きにくかったのかもしれぬ。それが当時の日本勢の実力だった
▼漫画から四十六年後、大坂なおみ全豪オープンで優勝を果たし、世界ランク一位に上り詰めた。漫画でさえ、描くことをためらわれた日本勢による世界一。それを大坂が自らのラケットで描いてみせた。想像力の世界を超えた快挙に拍手を送る
全米オープンに続く四大大会での連勝である。技術、強さ、精神力。大坂は勝って当然の選手に成長した-ともう書いてしまおう
▼あの漫画のファンとしては大坂と岡、なおみとひろみと名前が少々似ている気がしてならない。次の四大大会は五月。「大坂、全仏もねらえ!」
2019年1月27日 中日新聞 中日春秋
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二重国籍の大坂なおみが日本登録で出場する理由とは(日刊スポーツ) - goo ニュース
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