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飼育係がイルカショーを進行 名古屋港水族館、手作りの魅力発信

2009年6月30日 夕刊

イルカのパフォーマンスで進行係を務める小倉さん=名古屋港水族館

 名古屋港水族館(名古屋市港区)は、これまでイルカのパフォーマンスでプロのMC(マスター・オブ・セレモニーズ=進行役)を雇っていたが、7月1日から、特訓を重ねた同館のトレーナーが進行を担う。2月から始まった水族館のタイムリーな話題を館職員らが紹介する「海の生き物レター」も、すでに11号。飼育係や職員の“手作り”で水族館の魅力を発信する試みが本格化している。

 プールサイドから投げられたフリスビーを、イルカが空中でキャッチ。「感想を聞いてみたいと思います」と、MC役の小倉仁(さと)さん(27)がプールサイドに寄ってきたイルカのムーンにマイクを向けると、かわいい声で「キュイ、キュイ」とあいさつ。「応援ありがとうございました!」。小倉さんとムーンが頭を下げると、観客から大きな拍手がわき起こった。

 イルカのパフォーマンスは1日3〜5回で、1回20分余り。これまで音響やカメラと一緒に、MCもプロに外部委託してきたが、昨年冬から「トレーナーでできないだろうか」と検討を始めた。

 本決まりになった時、小倉さんは「ついに来たかと思った」と笑う。4月から、プロにアドバイスを受けながら、発声練習をしたり、台本を覚えたり特訓が始まった。通しの練習は主に閉館後。発声練習は仕事の合間を縫って、トレーナーが各自で行った。

 「飼育係や観客など大勢の人の反応に気を配りながらの進行は本当に難しい。イルカの調子が悪い時にどう対応するかも課題。余裕ができたら、自分の色もちょこっと出せたら」と小倉さん。6月中旬から徐々に自前のMCに切り替え、7月からは、トレーナーだけで行う。まずは6人でスタート。少しずつできる人を増やしていく。

 2月に始まった「海の生き物レター」。学習交流課の勝見乃里江さん(34)が、飼育係の撮った写真や飼育秘話を取材して紹介している。その内容を館内にパネルで張り出したほか、今月からチラシを2000部印刷し、来館者が持ち帰れるようになった。カマイルカの出産やニシキマゲクビガメの赤ちゃん誕生のほか、婿入りしてきたコウテイペンギンの輸送を紹介するなど、普段見ることができない水族館の舞台裏も伝えている。

 「現場の人の話は面白い。それをお客さんに伝えられたら」と勝見さん。少しずつ、今までと違う水族館が発信されている。