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名古屋出身のMF瀬戸貴幸 ルーマニア1部リーグの舞台へ


ルーマニアのサッカーリーグで活躍する瀬戸貴幸中日新聞社

国内では無名で、Jリーグの経験もないサッカー選手が、今年8月から東欧のルーマニア1部リーグの舞台に立つ。名古屋市出身のMF瀬戸貴幸(23)。今季、所属クラブが同国2部東地区で2位に入り昇格が決まった。オフの今月中旬に帰国。同市中区の中日新聞社を訪れ、異国での奮闘や将来の夢を語った。

 瀬戸はFCプロイェシティというクラブの守備的MFとして、今季2部の8割以上の試合に出場した。リーグ前期にはベストイレブンを受賞。「ある程度通用する」と手応えを感じている。

 瀬戸によると、日本との最も大きな違いは球際の激しさ。「練習中にスライディングやひじ打ちは当たり前」。もともとロングパスやスルーパスを得意とする技巧派は、体格のいいルーマニア人に当たり負けない強さも身に付けた。

 愛知・熱田高では全国大会の出場歴、選抜チームへの選出歴ともにない。卒業後、約1年半ブラジルにサッカー留学して帰国。Jリーグクラブで練習参加する道を模索したがかなわなかった。

 2007年、兄の知人を通じて欧州のクラブを探し、創設まもないプロイェシティのテストを受け入団。07〜08年に3部で優勝。08〜09年は2部で2位となった。

 活躍の背景には、毎日約30分居残りで壁にボールを当てて磨いた正確なコントロール技術がある。寮では、その日言い表せなかったルーマニア語を辞書で調べるなど1〜2時間語学に割いた。今は仲間にプレーの文句をつけられても平然と言い返すほどだ。

 幼少時代の瀬戸を知る名古屋フットボールクラブ(FC)の小崎峰利理事長(52)は「あんな恥ずかしがり屋が」と変ぼうぶりと適応能力に驚く。

 2部時代の月収は12万〜13万円。ピッチはでこぼこ、寮に風呂はなく、環境はよくない。そんな異国で暮らす原動力は「単純にボールをけるのが好き」といういちずさと、「サッカーの本場で挑戦したい」という熱意。

 1部は給料が5倍ほどに増える。まもなく結婚する伴侶を迎え新たな挑戦となる。ルーマニア1部は、オランダ1部と同ランクに位置しレベルは高い。「僕が唯一の日本人。大きな舞台でゴールを決めれば注目されるはず」。将来はスペインでのプレーを夢見ている。(垣見洋樹)

 【せと・たかゆき】 名古屋市港区出身。1986年2月5日生まれ。181センチ、73キロ。名古屋FCから愛知・熱田高へ。利き足は右。所属するFCプロイェシティはルーマニアの首都ブカレストの北50キロの同名の都市にある。同国リーグのチーム数は1部18、2部は東西各18。2部の東西各上位2チームが昇格し、代わりに1部下位4チームが降格する。