人の土俵で褌を取る

気になったニュースの備忘録+α

エウロパ

木星の衛星「エウロパ」に巨大な湖、生命存在の可能性高まる


(写真提供:NASAJPL、アリゾナ大)


木星越しに現れるエウロパ(写真提供:NASA

 木星の衛星「エウロパ」には大きな海だけでなく、地表を覆う厚い氷の下に巨大な湖があることが分かったとして、米国の研究チームが16日の科学誌「ネイチャー」に研究結果を発表した。エウロパの海に生命が存在する可能性も高まったと解説している。
米航空宇宙局(NASA)の科学者によると、エウロパに海があることは10年ほど前から確実視されていた。しかしこの海は厚い氷に覆われていることから、地表と接触して生命の維持に必要な養分を摂取することができないと見られ、生命存在説の妨げになっていた。
テキサス大学などの研究チームは1989年に打ち上げられた木星探査機「ガリレオ」が撮影した木星と衛星の画像を解析。その結果、エウロパの海の上部に湖が存在し、揺れ動いている形跡があることが判明した。研究者は「氷はその厚さにもかかわらず活発に混じり合っている可能性があり、エウロパとその海に生命が存在する可能性が高まった」と指摘している。
NASAの科学者はこの研究について、エウロパに生命の兆候を見つけようとしている科学者にとって朗報だと述べ、「エウロパに生命が存在できることを示す手がかりになる」と解説。湖は氷の表面から約3〜5キロ、海は約50キロの深さにあると推定している。
今回の発見について確認する唯一の方法はエウロパに探査機を送ることだ。その計画は検討されているものの、まだNASAでは承認されていない。
CNNニュース2011.11.17 Thu posted at: 12:04 JST

木星の衛星エウロパに魚が生息?


 太陽からはるか遠く離れた木星の衛星エウロパの海に、魚のような生命体が生息している可能性があるという。エウロパは氷の外殻に覆われているが、地下の全域に深さ160キロの海が広がっていると考えられている。ちなみに衛星表面に陸地は存在しない。この海に従来モデルで想定されていた値の100倍の酸素が含まれているという画期的な研究結果が発表され大きな論争を呼んでいる。
 酸素がこれだけ存在していれば、顕微鏡サイズを越えた生命体をはぐくむことが可能だ。研究チームの一員でアメリカのアリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学のリチャード・グリーンバーグ氏は、「理論上、エウロパでは魚のような生命体が少なくとも300万トンは生息できる。
“生命体が存在する”と断言はできないが、生命活動を支える物理的条件が整っていることは確実だ」と話す。同氏の最新研究は、先月プエルト・リコのファハルドで開催されたアメリカ天文学会惑星科学分科会(DPS)で発表された。
 マサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所に所属する深海分子生態学者ティモシー・シャンク氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「判明している情報に基づくと、エウロパの海底の一部には、地球の深海に存在する熱水噴出孔周辺と非常によく似た環境があるはずだ。この条件下で生命体が存在しないとなると、その方が驚きだ」。
 ただし今回の研究が示した結果だけでは、エウロパでどのように生命が進化しているのかは想像に任せるしかない。結論を出すにはあまりに早急すぎるだろう。
 エウロパは1610年、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイにより発見された。しかし、この衛星が詳細に研究できるようになったのは、NASAの木星探査機「ガリレオ」が木星系に到達した1995年以降のことである。
 探査機ガリレオは非常に興味深い調査結果をもたらした。特に、エウロパの表面下に塩分を含んだ海が広がっていることがわかり、生命が存在する可能性を見出した。万が一ガリレオがエウロパに墜落すると環境汚染の恐れがあったため、2003年、NASAはガリレオを意図的に木星に衝突させた。
 ガリレオ本体から分離されたプローブ(小型探査機)が海をダイレクトに観測したわけではないが、エウロパ表面に広がる氷の外殻の年代や構成物資、地質的構造から、地下に海が広がっていることは確実だと考えられている。
 前出のグリーンバーグ氏はこう話す。「例えば、エウロパのキラキラと輝く表面は年代が比較的新しいことを示している。太陽系に属する惑星や衛星はすべて誕生してから40億年以上たっているはずだが、エウロパの表面には衝突クレーターがあまりなく、氷の外殻は形成後わずか5000万年しか経過していないと考えられる」。
 なぜ表面の氷が若いのか、それを解くカギは潮汐力(ちょうせきりょく)である。地球が太陽の引力により膨張・収縮するように、エウロパも木星の引力の影響を受ける。この潮汐力から生じる摩擦熱がエウロパを温め、太陽から7億7800万キロ離れていても、液体状の水が維持できるというわけだ。
 また、氷の外殻は潮汐力によってひび割れを起こし、そこから比較的高温の地下の海洋水が染み出てくる。表面に達した海洋水は凍り付くが、それと同じ比率で古い氷は沈んで地下の海に溶けていく。このようにして、氷の外殻と地下の海は循環していると考えられる。
 この“再製氷”サイクルにより、表面の氷が若々しく保たれる理由を説明できる。同時に、表面で生まれた酸素が地下の海まで運ばれている可能性も示される。エウロパの酸素は、木星の磁場から放たれた荷電粒子が氷にぶつかるときに生まれる。「再製氷のペースから推定すると、最初の表面酸素が地下の海に到達するまでに10〜20億年かかったと考えられる」とグリーンバーグ氏は話す。
 同氏の推測によると、再製氷プロセスの開始から数百万年後には、エウロパの海の酸素レベルは地球の海を超える現在のレベルにまで達していたという。
 変化がこのようなプロセスで進行したのであれば、私たちの知るような生命体がエウロパに定着した可能性は大いに高まる。グリーンバーグ氏は次のように話す。「まず、最も原始的な生命体が誕生するとき、無酸素の環境が必要となる。酸素はほかの分子体を分離させる性質を持つので、酸素があるとDNAなどの遺伝物質が自由に集結できなくなる」。
 また、酸素レベルが急激に増大すると、活性度の高い酸素に未順応の単純生命体は生きていくことができなくなる。しかし酸素レベルがゆっくりと上昇すれば生命は耐性を持つように進化することが可能になり、それどころか酸素に依存するようにもなる。これが初期の地球で起こったと考えられているプロセスである。
 このような主張に対し、反論も出ている。例えば、「魚のような生命体が存在するという可能性は、再製氷が5000万年ごとに周期的に行われていたら、という前提に立っている。しかし、再製氷はもっと断続的なプロセスだった可能性もある。その場合、酸素レベルは研究結果よりも低くなり、生命体の可能性も低下する」といった意見である。
 アメリカのカリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所の上級研究員ロバート・パッパラルド氏は、次のように話す。「おそらく、5000万年前に大規模な循環があったのだろう。しかし現在では循環ペースは遅くなり、どんどんと緩慢になっている」。
 パッパラルド氏によると、このシナリオでも酸素が海まで到達する可能性はあるが、複雑な生命体をもたらすようなレベルにはならないという。「エウロパの潮汐活動が断続的なものだとすると、岩石のマントルからもたらされる熱や栄養素の度合いも大きく変化することになる。環境の変化に対して耐性を高めるような進化が起こるだろうが、必ずしも地球で生まれたような複雑な生命体が誕生するとは限らない」。
 また、パッパラルド氏は、潮汐摩擦がエウロパのコアまで温めるほどのものかどうかも、生命の可能性に大きく影響すると指摘している。
 地球外知的生命体探査(SETI)研究所の宇宙生物学者シンシア・フィリップス氏も同じ意見で、「たとえ水中に酸素が大量にあったとしても、エウロパに微生物以上の生命体が生息している可能性は低い。生命を支える化学的栄養素の量が十分ではないと予想されるからだ」と話す。
 それでも、ウッズホール海洋研究所のシャンク氏などは、「微生物だとしても生命の可能性があるのであれば、研究する価値は十分にあるはず」と考えており、いずれエウロパに降りた宇宙探査機が氷を突き進み、地下の海を探索する将来に備えて研究を進めている。その際には、地球の深海で熱水噴出孔から湧出する栄養素を遠隔操作無人探査機(ROV)で探知するような方法になると考えられる。
 ただし、地球で使うような装備では役に立たない。まずは、DNAやRNAなど生命を示す化学的サインを探知できるセンサーを開発しなければならない。そして、小型化・軽量化などはもちろん、確実な通信機能が欠かせない。「地下の海にたどり着いて生命を見つけても、それを知らせることができなければ何の意味もないからね」とシャンク氏は話す。
 しかしながら、NASAエウロパ探査の次のステップとして行うのは、オービター(軌道周回観測機)によるものとなる可能性が高く、海中探索はおあずけのようだ。NASA欧州宇宙機関ESA)と共同でミッションを行う計画も立てている。
 NASAジェット推進研究所のパッパラルド氏は、次期エウロパ・ミッションを担当しており、「NASAが計画しているオービターは、放射線などさまざまな影響に対しておよそ1年は持ちこたえられるはずだ。エウロパに“複雑な生命体”が存在する具体的な証拠を見つける可能性もあるが、それは楽観的と言えるだろう」と話す。「まず、有機体の成長に十分な化学エネルギー量が存在するかといった基本的な証拠が必要だ。可能性はゼロではないので、今後の探査活動に期待しよう」。
Image courtesy NASA/JPL/DLR
Victoria Jaggard
for National Geographic News November 17, 2009