人の土俵で褌を取る

気になったニュースの備忘録+α

キセノン

中日春秋

そのニュースには、どきっとした人が多かっただろう。福島第一原発の2号機で局所的に臨界が起きた可能性がある、という東京電力の発表である
すぐ思い浮かんだのは、こんな一首。<喜劇映畫觀(えいがみ)てゐるときもすぐ其處(そこ)に冷たき光洩(も)る非常口>塚本邦雄。「年内にも冷温停止」と繰り返す政府のメッセージもあって、最近、少し警戒心を緩めてしまっていたところがある
セシウムストロンチウムはもはや見慣れた名だが、今回、検出されたのはキセノン。その検出が核分裂が起きた証拠だそうだ。奇(く)しくも、その名は「見知らぬ人」といった意味のギリシャ語に由来する
コメディーに大笑いしていたら、「見知らぬ人」に<非常口>を指さして警告されたような気分だ。やはり想が連なるのは、人為ミスで止まっていた玄海原発4号機の再稼働の件
九州電力といえば、2、3号機の再稼働を策した「やらせメール」問題の総括も中途半端なまま。4号機再稼働には「地元理解を得た」と言うが、それが佐賀県知事の「容認」発言を指すなら噴飯物だ。知事こそ「やらせ」の発端となる発言をしたとされる人である
時の経過、警戒心の緩みに乗じて、しゃにむに再稼働ムードを醸そうとする動きは今後も続こう。だが、忘れたくない。平穏な日常のすぐそこに原発という<非常口>が常に冷たく光っているのを。
2011年11月3日

2号機、臨界でなく「自発的核分裂」=キセノン検出で東電

東京電力〈9501〉福島第1原発事故で、2号機の原子炉格納容器内の気体から核分裂反応を示す放射性物質キセノンが検出された問題で、東電は3日、キセノンの検出濃度が低いことから、核分裂が連鎖的に進む臨界は生じていないとの結論を出した。東電は調査結果を経済産業省原子力安全・保安院に報告。原子炉内の気体の監視を今後継続する。
東電の説明によると、キセノンの発生は、核燃料に含まれる放射性物質キュリウムが自然に核分裂を起こす「自発的核分裂」が原因という。停止中の原子炉でも一般に起きる現象で、原子炉の安定とは無関係としている。
キセノンは、2号機格納容器の「ガス管理フィルター」から採取した気体に含まれていた。濃度はキセノン133(半減期約5日)と同135(同約9時間)がそれぞれ1立方センチ当たり、約10万分の1ベクレルだった。
東電は2日、キセノンの半減期が短いことから「比較的近い過去に、小規模な臨界が発生した可能性がある」との認識を示していた。
しかし、東電が原子炉内で臨界が起きた際の出力エネルギーを基にキセノン135の濃度を試算した結果、検出値に比べて1万倍高くなることが判明。また、キュリウムが自発的核分裂を起こした場合のキセノンの濃度を計算すると、今回の検出値にほぼ合致したという。
キセノン検出をめぐって、保安院は2日夜、「局所的な臨界の可能性は否定できない」とする一方、「自発的核分裂の可能性も高い」との見解を示していた。(了)
[時事通信社] 2011年 11月 3日 17:09 JST