人の土俵で褌を取る

気になったニュースの備忘録+α

川崎フロンターレ

陸前高田の子どもたちと〜算数ドリルが結んだ絆〜

今年3月、東日本を襲った大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市。津波で文房具や教材も流されてしまったため、一人の小学校の先生が、教材の提供を呼びかけたことがきっかけで、全国から多くの支援の申し出が寄せられ、その中に、川崎フロンターレからの支援の申し出もあったそうです。サッカーチームと教材ってなかなか結びつかないですが、実は、フロンターレが独自に作った算数ドリルがあるとのこと!
フロンターレは、陸前高田市の9つの小学校にこの算数ドリルを計800冊を寄贈。このドリルは、現在も実際に授業で使用されていて、僕が小学校を訪ねると、クラブ活動で集まった子どもたちが、その算数ドリルをやっています。しかも、楽しそうに!なんで勉強をこんなに楽しんでやっているんだろう?と思って聞いてみると、算数の問題が、フロンターレの選手の走る速さとかサッカーゴールの体積を求めたりなど、サッカーや川崎市に絡めた問題ばかりだからなんだそうです。しかも、このドリルがきっかけで、子どもたちが1つの日常を取り戻していると保護者の方に伺ったときは、うれしかったですね。サッカーチームがなぜ算数ドリル?という疑問もわきますが、そこには川崎市ならではの事情があるそうです。というのも、川崎にはなかなかプロのスポーツチームが根付かないと言われていたこともあり、市民とのふれあいをどこよりも大切にしてきた川崎フロンターレ。選手自身が、地元の銭湯に絵を描いたり、保育園で子どもたちに絵本の読み聞かせをしたりと、選手は、サッカーをするだけではなくて、地域とのふれあいを当然のこととして考えているので、この算数ドリルも、地域密着型の取り組みの一環なんですね。この算数ドリルが縁で、フロンターレの選手全員が陸前高田を訪れ、小学校で開催したサッカー教室には、約100人の子どもが参加。中には、想像もできないほどつらい経験をした子どももいましたが、フロンターレの選手とのふれあいの中で、子どもたちの心からの笑顔が見られたのは、本当にうれしいですね。そして、今度は、フロンターレが子どもたちを川崎市に招待。陸前高田「川崎修学旅行」と命名された今回の訪問では、川崎市の施設や川崎市唯一の相撲部屋「春日山部屋」を訪問たり、フロンターレの試合を応援に行ったりと、盛りだくさんの内容です。そして、子どもたちも選手たちへのお礼も込めて、当日試合会場に到着した選手たちを、子どもたちが作った「がんばっぺし!かわさきフロンターレ」という力強いメッセージでお出迎え。覚えたての応援歌を歌い、精一杯声援を送った子どもたち。残念ながら、試合には負けてしまいましたが、算数ドリルが縁でしっかりと結びついた絆がそこにはありました。震災後、僕も様々な被災地を訪問しましたが、そこで人々から必ず言われることがあるんです。「震災から時間が経つにつれて、人々の心の中から震災のことが風化していってしまう。どうか忘れないでほしい」と。そういう言葉を思うと、今なお継続的に活動し、交流して、子どもたちの支えになっているのはすごいなと思いましたね。絆を結ぶのは、地理的な距離が問題なのではなく、心の距離が重要なんですね。地域が心を一つにして支え合っていくことの大切さを改めて実感しました。ありがとうございました。
学校で、子どもたちが自発的にやっているフロンターレの算数ドリル。内容も工夫されたこのドリルが、子どもたちの心をつかむんですね。まだまだやらなければいけないことは山ほどありますが、子どもたちの元気な姿を見ると、ほっとします。
報道ステーション2011年10月28日 修造コラム