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崩壊のNZ大聖堂、紙で再生 日本人建築家が設計

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写真:「仮設大聖堂」の模型。テントのように組んだ紙製パイプのすき間から日光が入る=坂茂建築設計提供拡大「仮設大聖堂」の模型。テントのように組んだ紙製パイプのすき間から日光が入る=坂茂建築設計提供
 今年2月のニュージーランド(NZ)南部地震で損傷したクライストチャーチ大聖堂を、日本人建築家の坂(ばん)茂さん(54)が仮設の建物で再生させる。素材は「紙」だ。震災から1年となる来年2月22日までの完成を目指し、急ピッチで準備を進めている。
 大聖堂は1864年に建設が始まったとされる、英国教会系の石造りの建物。市中心部の広場にあり、街のシンボルとして親しまれていたが、2月の地震で尖塔(せんとう)などが崩落。6月の地震で、建物の前面のステンドグラスが崩れ落ちた。
 「すぐ来てくれませんか」。4月、大聖堂のスタッフから坂さんに電話が入った。坂さんは、阪神大震災、ハイチ、中国・四川など世界の被災地で紙を使った仮設住宅などを手がけてきた。東日本大震災でも、宮城県女川町でコンテナを使った仮設住宅を設計している。教会スタッフが、そんな坂さんの活動をインターネットで偶然見つけた。
 6月下旬、坂さんは封鎖された市中心街に許可を得て入り、大聖堂を見た。「市民には以前の教会の記憶がある。その幾何学的なデザインを生かそう」。構想は1日で固まった。
 仮設の大聖堂は、高さ約24メートルで、古い教会とほぼ同じ。尖塔部分はないが、前面と後部の三角形の形を生かした。長さ17メートル、重さ約500キロある紙製パイプを86本使い、テントのように三角形に組み合わせた。材料は現地製。紙といえども強度はあり、現地の基準も満たしているという。地元では「段ボール製の大聖堂」と話題になっている。
 坂さんは無償で設計を引き受けた。建設費として見込む400万NZドル(約2億5千万円)は、寄付などでまかなう方針だ。
 教会側は大聖堂の再建を検討しているが、めどが立っていない。約700人を収容できる「仮設大聖堂」は、コンサートなどにも使われる予定で、10年程度は使われる見込みという。
 震災からまもなく半年。クライストチャーチ大聖堂のピーター・ベック首席司祭(63)は「テントのようなデザインは昔の教会に似ている。希望の象徴として、未来への自信を与える建物になると信じている」と期待を込める。
 阪神大震災後に坂さんが造った紙製パイプの教会は10年以上たって台湾に寄付された。坂さんは「コンクリートの建物でも地震では壊れるわけで、しょせんは『仮設』。紙で作っても、みんなが建物を愛せば、パーマネント(永続的)なものになる」と話している。(五十嵐大介
朝日ドットコム 2011年8月13日12時22分