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「杁」この字読めたら愛知県民? でも意味は…

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写真:杁の仕組み拡大杁の仕組み

 杁中(いりなか)、杁ケ池(いりがいけ)公園、二ツ杁(ふたついり)……。「杁」という漢字は愛知県内ではおなじみだが、何を指しているのか知らない人も多いはず。愛知の農業に欠かせなかった「杁」の実物を見て、知多半島の治水の歴史や文化を学ぶ「博物館めぐり」が17日、同県半田市周辺で開かれる。
 杁のつく地名の周辺を歩いてみると、必ず行き当たるのが川や池だ。名古屋市昭和区杁中の近くには隼人(はやと)池公園、杁ケ池公園(同県長久手町)もその名の通り池がある。名鉄二ツ杁駅(同県清須市)の近くには市の水防センター、といった具合だ。
 だが、池や用水に関係するなら、日本全国に杁のつく地名があってもいいはずだ。しかし、「新版日本分県地図地名総覧」(人文社)を検索したところ、「杁」は愛知県内と、愛知、岐阜県境の岐阜県海津市の1カ所(北杁先)にしか存在しなかった。ほかの文献でも岐阜県中津川市内などこの地域に限られる。
 なぜか――。「杁は尾張でつくられた『国字』だからです」と、三重大名誉教授で「地名学入門」(大修館書店)などの著書がある鏡味明克さん(74)が教えてくれた。愛知県は丘陵地が多く、田畑に川の水を引くことが難しかった。このため、雨水を池にためて、必要に応じて農地に流すための水門が各地にあった。その取り入れ口を方言で「いり」「いる」といい、それに漢字が当てられた。木製なので、木偏に入と書いた。三河地方では土偏の「圦」を使った。
 半田市立博物館には、池に沈められた杁に垂直にさして使う「タツ」と呼ばれる長さ約3メートルの木製の樋(とい)が展示されている。これほど大きな物がほぼ原形のまま残ったのは珍しいという。木曽川から知多半島に至る愛知用水が1961年に完成するまで、ため池から周辺の田畑に水を送り続けたもので、寄贈した同市の「宮池水利組合」の杉江久男さん(81)は「水利の苦労を語る地域の『形見』として、博物館に残ったことはうれしい」と話す。
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