人の土俵で褌を取る

気になったニュースの備忘録+α

プラネタリウム感動ありがとう 名古屋市科学館、31日ラスト上映

2010年8月7日 夕刊


老朽化で取り壊される初代プラネタリウム(手前右のドーム)と来春オープンする世界最大のプラネタリウム(奥の球体)


アドリブの利いた解説と工夫を凝らした映像で"日本一"を自負する名古屋市科学館(同市中区)のプラネタリウムが、老朽化に伴う改築で今月31日の上映を最後に半世紀の歴史に幕を下ろす。今春まで44年にわたり、星空の魅力を伝えてきた元解説員の北原政子さん(65)=同市昭和区=も万感の思いを込めてフィナーレを見守る。

1962(昭和37)年にオープンしたプラネタリウムは、ドーム型スクリーンの直径が20メートルで、当時は世界最大級。録音によるナレーションではなく、専門知識を持つ解説員が投影機を操作しながら季節や科学的なトピックスを盛り込んでしゃべるのが特徴だ。専門家が選ぶプラネタリウムの全国1位になったこともある。

北原さんは科学館で勤務を始めた66(同41)年、21歳の時からほぼ解説員ひと筋。最初は「雨が降ってるけど星は見えるのか」などと問い合わせがあった。今や最新の天文情報がインターネットで瞬時に手に入る時代。「プラネタリウムが人生の中心でした」。2004年から2年間は日本プラネタリウム協会の会長も務めた。

7月末までの通算入場者は1555万人(科学館全体は2577万人)。近年は7割がリピーターで子どもの時に鑑賞した親が、子どもを連れてくることも多い。


プラネタリウムの思い出を語る元解説員の北原政子さん=名古屋市中区の市科学館で

米アポロ宇宙船などの宇宙開発が日進月歩だった70~80年代。押し寄せる客をさばくため、座席の間に補助いすも並べた。「ものすごい天文熱に応えようと、必死で勉強と工夫を重ねました」

娯楽もレジャーも多様化した今、かつての熱気はない。それでも北原さんは言う。「星を見てほっとしたり、宇宙の果てに思いをはせたりする時間が心豊かな人生には必要なんです」

美術や芝居と同じように、プラネタリウムを大人の文化として定着させたいとプログラム作りにも全力で取り組んできた。仕事に悔いはないが、今でも子ども向けと思っている人がいるのが心残りだ。「未完の夢」は、北原さんも計画立案に奔走した世界一の設備を誇る新プラネタリウムで、マイクに向かう後輩に託す。

DATE:2010/08/11 17:14
URL:http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2010080702000206.html