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1歳サル厳冬に独り…生みの親に捨てられ、育ての親姿消し


ほかの猿が身を寄せ合う中、独りぼっちの「タクマ」(大分市高崎山自然動物園で)

 野生ザルの餌付けで知られる大分市高崎山自然動物園で、母ザルの育児放棄に遭い、自然界では珍しく別の雌ザルに育てられていた1歳の子ザル「タクマ」が再び独りぼっちになった。

 いつも一緒だった母親代わりの雌ザルが、餌場に姿を見せなくなってもうすぐ2か月。雌ザルは山中で死んだとみられており、飼育員らは厳しい冬を過ごすタクマの行く末を案じている。(松下宗之)

 園によると、タクマは雄で2007年7月に生まれた。同年12月に母親から見放され、餌場で瀕死(ひんし)の状態で見つかった。飼育員の介抱で命をつないだ後、同じ群れで我が子を亡くしたばかりの20歳の「テンテン」に懐き、実の母子のように身を寄せ合い生きるようになった。雌ザルが実子以外を育てるのは珍しく、園では他に1例しかないという。

 しかし、昨年10月以降、タクマが1匹で餌場に現れるようになり、ほかの子ザルが母親に抱かれて暖をとる中、園が用意したストーブの前にポツンと座っている姿が見られるという。テンテンは、人間の年齢に換算すると60歳ほど。雌ザルは一般的に群れの中で一生を過ごすことから、山中で死んだ可能性が高いとみられている。

 1歳ほどの子ザルは山で自力で餌を取る能力が低く、園内の餌場で飼育員から与えられる小麦や芋のほかに、母親にしがみついて母乳を飲みながら育つ。母乳を与えてくれたテンテンがいなくなり、タクマにとっては厳しい冬になっている。

 園の案内係の河野光治さん(60)は「タクマもほかの子ザルのように甘えたい盛り。名前の通り、何とかたくましく生き延びてほしい」と心配している。
(2009年1月11日14時58分 読売新聞)